新型コロナウイルス感染に対する国の対応は基本的に間違っている。感染症予防は公衆衛生専門家が主導すべきである。
内閣は初期の段階から内部に新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、助言組織として新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を置いた。庶務は、厚生労働省が担当したが主導権は発足当初より内閣官房が担当した。
問題はそのメンバーである。広い視点で対策を考えるのも大切ではあるが、アドバイザー役としては立場のはっきりとした委員からの意見の取りまとめが必要である。日本感染症研究所が中心となり、公衆衛生の専門家、保健所、医師会などが集まった組織で感染拡大阻止のための対応をまとめるべきであった。どのようにして委員が決められたかは分からないが、マスコミ報道にも連日感染症専門医が登場していたが、委員会でも感染症専門家の意見が強く反映されて来たのではないかと思う。日本の感染症専門医は感染した患者の治療の専門医ではあるが、感染予防は公衆衛生専門家が担う部分である。また内閣が主導権を握ったため地方自治体の動きが制限されてしまったことも大きな失敗である。感染の発生源は小さな局所的地区であり、その地域を統括管理している地方自治体がまず動いて対応すべきであった。
小さな火事が目の前で起こっているのに地域の消防が出動するのではなではなく、国の指示を待っていたのである。
この状態は今後も続くのである。公衆衛生学の基本に基づき感染症研究所、地域の保健所、医師会などが権限を持ち適切な対応を行なってゆくべきである。国は局所的判断を地方自治体に任せ、国としての支援方法、国境封鎖など広い視野の対策を考えてゆくべきである。その後、感染症対策専門家会議のメンバーを一部入れ替えて新型コロナウイルス感染症対策分科会に改変し、更に厚生労働省に新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードなどが出来ているが同じようなメンバーである。先日、日本学術会議から出された「感染症の予防と制御を目指した 常置組織の創設について」の提言のように 将来の感染症対策を見据え、思い切った組織替えを進めなくてはならない。
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