周術期化学療法 

癌に対する外科手術後に化学療法を行う必要性が有るか無いかについて議論があるようですが、早期癌以外はすべて外科切除とともに化学療法を行わなければならないことは当然のことです。このように話すと科学的根拠はあるのかと追及されかねます。

こんなことは科学研究以前に物事の理屈を考えれば当然のことです。早期癌の状態であれば外科手術のみでほぼ100%治癒可能と判断して良いことは科学的根拠もあると言って良いでしょう。しかしその状態より少し進行した状態となると、たとえ癌局所は完全切除(R0切除という)であっても5年生存率かなり下がります。例えば5年生存率が70%程度であったときには、言い方を変えればこの間に30%の方は再発で亡くなっているということです。

癌局所が完全に切除されたのになぜ再発するのか考えれば、どこかに癌の取り残し(遺残)があったか、抹消血液中の遊離癌細胞が育ったかのいずれかだろうと考えるのが順当でしょう。(癌の方の血液中には癌の主病巣から離れて血液中を流れている単個の癌細胞が存在することは今日では実証されている。)遺残癌細胞の存在が実証されなくとも術後に適切な化学療法を行えば5年生存率が改善することは多くの論文でも明らかです。これは目に見えないような遺残癌細胞が化学療法により処理されたからと考えるのが順当でしょう。

私たちは抹消血中の遊離がん細胞の存在などが実証されていない40年も以前(1980年)のころから、このようなことは当然と考えて術前から術中、術後と休みなくいわゆる周術期化学療法を行い、治療成績の向上を認めて来た。

なんでもRCT(ランダム化比較試験)を行わなければ意義を認めないとする現在の学者の考えは本質を忘れているのではないのか。

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