日本の“ものづくり”が潰れたわけ 

かつて日本はものづくり大国と呼ばれ、それらの製品を持っていることが自国の自慢であり、個人としてもステータスとなっていた。終戦後電気製品、自動車、オーディオ機器、その他、汗を流して努力してきた製造業は近年一部を残し業績は低下している。それに反しI Tシステムの運用で楽に収入を上げている会社は増えて来ている。その結果、若者が入りたい企業の傾向は大きく変わり、製造業で技術者として自分の能力を試したいという志向が減っていると言われ続けている。

これまで何らかの製品を作り出し、より良く改良することに情熱を持って取り組んできた会社が成功し、収益と共にその完成度が評価され、更に開発改良に努力してブランドとして認められて来ていた。そのような優れた製品として完成させるまでには優れた研究者、技術者の努力の積み重ねがあり、当然それらを支えるためには多くの投資が行われて来ていたことと思う。このようにして世界的にも評価されてきた製造企業が増え来ていたのだ。

しかし、そのようにして企業が裕福になってくると、株主は株価の上昇、配当の増加を期待するようになる。そして会社の運営幹部の構成は変化し、製品作りよりも利益を上げることに長けている人を据えるようになる。

結果として銀行、証券会社その他金銭を動かすことで儲けることを仕事として来た人が会社の実権を握るようになる。その人達は儲けるために、製品の質で勝負するのではなく価格競争で戦うことに傾いた。このようにしてしまった責任は株主にあるのでしょう。

会社が良い製品を生み出すために開発費と多くの技術者の努力で、多くの特許を取得してもそれを無視して同じような製品を作る海外の会社が出てきて安価で販売するようになると、価格競争で勝てるはずはない。日本の会社は収益の多くを開発費に充てているので価格は高いが、質の良い製品であるということでブランド価値を下げない努力をすべきであった。

しかし収入を上げることが役割である会社幹部は製品の質を下げても価格競争をおこなって来た。

結果として東芝、ソニー、シャープ、日産、その他日本ブランドでもあった会社が倒産あるいは外資との合併など情けない状況になってしまった。

こんな中で一時期低迷していたトヨタ自動車の社長に、創業の志を持った豊田明夫氏が就任し、社内改革をおこなった。今日の盛況を見ると、日本の宝であるトヨタ自動車を支えている株主の心意気が嬉しい。

ものづくり日本を支えるのは、お金を動かして儲ける人ではなく、汗を流してもの作りを

やろうとする人が経営幹部とならなければ日本ブランドは守れないのだ。

日本政府はどの技術が日本の宝であるのかの判断がつけられず、その技術を国として守るという考えが全くない。